英雄の盾

29/75
前へ
/75ページ
次へ
 看守長が真向かいの同型の椅子へ座り、灯りを脇へ置く。わたしはというと奥の椅子へ座って看守長の切り出してくるのを待つが、この男はただひたすらに欠伸をするだけで、一向に何も話しかけては来ない。  どこか疲れているようにも見える、が、それは自業自得と言うものだろう。大方夜更かしでもして何かを作っていたに違いない。部屋に並べられているこのわけのわからないものは、その実彼の自作なのだ。  わたしが尚も待っていると、看守長は今にも眠りそうにうつらうつらとしだす。そうしてやはり、寝た。寝息が聞こえてきた。  わたしは立ち上がってテーブルを回り、思いっきり振りかぶって頭を叩いた。瞬時にして看守長が目を開いた。 「いたぁい! 酷いねぇ、一体急に何をするんだよう七千番?」しきりに頭をさすっている。
/75ページ

最初のコメントを投稿しよう!

55人が本棚に入れています
本棚に追加