英雄の盾

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 わたしがもとのようにベッドへ座ったちょうどその時、右の壁の遥か遠方で重々しい扉の開閉音がし、一際癖のある足音とそれに続く常人の足音が静寂を切り裂く。ワゴンの車輪が賛同するようにカラカラと笑う。  その一団は約一名の妙に疳高い威圧を伴いながら距離を縮め、ややあってわたしの部屋の前にき、鋼鉄の扉に付属する、監視用の小窓が静かに開かれる。  そこから現れたのは、見慣れた男の切れ長な目。 「んー、調子はどうどう七十六番?」その癖のある高音と余裕めいた質問に、わたしは当然ながら答えない。何故ならそれは、質問からして間違っているからだ。何故人は生きるのか、などと言った愚問と大して差異はない。  男はわたしのことを暫し見分していたが、ややあって興味をなくしたように横を向いて他の連中へ指示を出した、それがまた、ここからでもはっきりと見えるように計算された角度なのを知っているので、わたしは見まいと目を瞑る。
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