英雄の盾

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 ☆ ☆ ☆   さて食事のあとの昼寝は心地よいものだ、と誰もが思うに違いない。だがわたしの場合、起きてからが問題だ。部屋の明度は見るからに落ち、先に倣って例をあげれば財産分与の話がはじまった辺りだろう。この時間帯にはいつまで経っても慣れず、それはわたしが元々寝汗掻きなのも幾分起因している。  起きると大抵ベタベタしていやになる。そんな時、わたしは眠たい目を擦りながら、どうしても例の薔薇色の一角へ足を運ばなくてはならなくなる。運びたくなくても。世間一般の生活をしている人間からしたらわたしも充分異臭を発しているのだろうが、その左隅はちょっと次元が違う。もっともわたしは花は好きだ。だが、花で唯一嫌いな匂いをあげるとするなら、それは薔薇なのだ。憎んですらいる。薔薇の方だってわたしを好んではいないだろう。そもそも拒絶の為にあの棘が存在するのではないのか。しかしこれはやり場のない怒りだ。わたしはまだ眠っていたいだけなのだ。尚も何とか打開策をベッドの上に探すが、到底万年床に安息の地はない。わたしは散々足掻いた結果起き上がり、ボロのようなワンピースを脱ぐ。下着ははじめから用意されていないので、それを脱いだだけで生まれたままの姿。
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