1790年 イタリア・ジェノバ ニコロの部屋

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レグバは、今の演奏が良かったとも悪かったとも言わない。 ニコロは、1ヶ月前から悪戦苦闘している曲を弾き始めた。 本当は1ヶ月半で演奏するなんて無茶だ。 譜面を読み、指番号であるボウイングを決め、弓をとったのがやっと1週間前。 2週間でこの大曲を完成させるなんて、どだい無理な話だ。 理想を言えば、6ヶ月は欲しいところだ。 でもやらなければならない。 サン・ロレッツォ大聖堂で演奏して、ヴァイオリニストとして成功する。 一刻も早くこんな貧しい暮らしから抜け出したい、とニコロは思っていた。 ニコロは大きく息を吸い、最初の音に魂を込めるように弓を弦に当てた。 え?こんなに澄んだ音が出るなんて。 ニコロは眼を見開いた。 今までで最高の音だ。 どうしてだろう? 考えられることは、さっきレグバが調弦をしたことだ。 自分でも思いがけない音色が出て、ニコロは嬉しくなる以前に戸惑っていた。
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