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どうしたのだろう?指が軽い。
ずっと苦労していた部分も軽やかに弾くことができた。
難解な重音の部分を完璧に弾き、最後の舞曲らしいフレーズは、眼にも止まらないような速い動きで、自分の指の動きが信じられない。
最後の1音を伸ばし、ニコロは思わず涙をこぼしてしまった。
初めて思い通りの演奏が、いつも頭の中でイメージしていた演奏ができたからだ。
「素晴らしい」
レグバは手袋をしたまま拍手をすると、表情を変えずにニコロをほめた。
「あ、ありがとう」
「どうだ?」
肩で息をしているニコロは、
レグバの質問の意味が分からなかった。
「え?」
「よし」
呆然としているニコロに、少し下がれと命じ、手袋をはずすと、レグバはいつどこから取り出したのか、自分のヴァイオリンを構え、猛然と弾き始めた。
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