1790年 イタリア・ジェノバ ニコロの部屋

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どうしたのだろう?指が軽い。 ずっと苦労していた部分も軽やかに弾くことができた。 難解な重音の部分を完璧に弾き、最後の舞曲らしいフレーズは、眼にも止まらないような速い動きで、自分の指の動きが信じられない。 最後の1音を伸ばし、ニコロは思わず涙をこぼしてしまった。 初めて思い通りの演奏が、いつも頭の中でイメージしていた演奏ができたからだ。 「素晴らしい」 レグバは手袋をしたまま拍手をすると、表情を変えずにニコロをほめた。 「あ、ありがとう」 「どうだ?」 肩で息をしているニコロは、 レグバの質問の意味が分からなかった。 「え?」 「よし」 呆然としているニコロに、少し下がれと命じ、手袋をはずすと、レグバはいつどこから取り出したのか、自分のヴァイオリンを構え、猛然と弾き始めた。
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