1926年 アメリカ・ミシシッピ州、町外れのクロスロード

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今夜は満月だが、あいにくの曇り空。星ひとつ見えない。 野犬が恐ろしくないことはない。 遠くの町から来た商人が、野犬に襲われたといううわさも聞く。 だがロバートは恐怖に打ち勝って、毎夜四辻に通っていた。 彼は町の居酒屋でギターを弾いていた。 南部の荒くれ者たちが集まる居酒屋。 1日の仕事を終えて酒を飲みに集まる男たち。 それを嬌声で待ち構える女たち。 本当は『ラヴィアン・ローズ』というフランス語のしゃれた店名があるのだが、人々はただ単にサルーン、酒場、と呼んでいた。 店の片隅にはピアノが一台。 もう何年も調律がされていない。 だが、酒を飲んで騒いで踊るにはぴったりの、音程の狂ったラグタイムピアノだ。
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