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今夜は満月だが、あいにくの曇り空。星ひとつ見えない。
野犬が恐ろしくないことはない。
遠くの町から来た商人が、野犬に襲われたといううわさも聞く。
だがロバートは恐怖に打ち勝って、毎夜四辻に通っていた。
彼は町の居酒屋でギターを弾いていた。
南部の荒くれ者たちが集まる居酒屋。
1日の仕事を終えて酒を飲みに集まる男たち。
それを嬌声で待ち構える女たち。
本当は『ラヴィアン・ローズ』というフランス語のしゃれた店名があるのだが、人々はただ単にサルーン、酒場、と呼んでいた。
店の片隅にはピアノが一台。
もう何年も調律がされていない。
だが、酒を飲んで騒いで踊るにはぴったりの、音程の狂ったラグタイムピアノだ。
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