1790年 イタリア・ジェノバ ニコロの部屋

4/29
前へ
/454ページ
次へ
「う、うん。そうだけど。 おじさん、誰? どうやってこの部屋に入って 来たの?」 少年にとって成人男性の年齢はよく分からない。 この男は父親よりは、はるかに若そうだが、18歳になるいとこのアントニオよりは年長に見える。   「おじさん?」   はたして男は心外だ、というように言った。 「あ、ごめんなさい」 「いや、構わない。もう少し若く作っておけばよかったかな?」 何を言っているんだろう?少年は、訳がわからないという表情をした。 よく見ると、男は整った顔をしていた。 イタリア人にしては少し皮膚の色は黒い。濃い眉とくっきりとした目元。 酷薄そうな唇の口角は下がり気味か。 成人男子にしては髭の影がない。女と言ってもいい肌のきめの細かさだ。
/454ページ

最初のコメントを投稿しよう!

377人が本棚に入れています
本棚に追加