1790年 イタリア・ジェノバ ニコロの部屋

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「う、うん。そうだけど。 おじさん、誰? どうやってこの部屋に入って 来たの?」 少年にとって成人男性の年齢はよく分からない。 この男は父親よりは、はるかに若そうだが、18歳になるいとこのアントニオよりは年長に見える。   「おじさん?」   はたして男は心外だ、というように言った。 「あ、ごめんなさい」 「いや、構わない。もう少し若く作っておけばよかったかな?」 何を言っているんだろう?少年は、訳がわからないという表情をした。 よく見ると、男は整った顔をしていた。 イタリア人にしては少し皮膚の色は黒い。濃い眉とくっきりとした目元。 酷薄そうな唇の口角は下がり気味か。 成人男子にしては髭の影がない。女と言ってもいい肌のきめの細かさだ。
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