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優しい恋人が、俺の事を好きでいてくれるはずだという自信の元に、試してみたくなった傲慢なお願い。
俺からのキスをじっと受け止めてくれていた恋人に囁いた。
「なぁ。
“嫌や”って言うてみて」
「……?」
小首傾げてキョトンとする恋人。
「ちょっとお前が言うの、聞いてみたいんやけど」
「何言うてん?」
ますます困惑しとる恋人。
さすがにこんな唐突なお願いは訊いてもらえへんか……と思いながら、切り札の言葉を出す。
「今度やるドラマの役作りの参考にしたいんやけど……」
「ああ!」
納得行ったという様に手をパチンと合わせて、ようやくニッコリ笑う。
「そぉゆう事かぁ」
意味不明な俺の言動の理由が分かって、ほっとしたのか舌足らずなふにゃふにゃな笑顔で呟く。
今決まっとるドラマの俺の役は、Sキャラに翻弄されるヘタレ役なんやけどね。
いつかやる役の参考に、なるかもしれんしね。
やす……、悪い男でごめんな。
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