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まだまだ我が社にも古い体質は残っている。
俺が総務にいる限り、彼女の目標達成は先延ばしになってゆく。
「じゃあ、よく考えといてよ」
黙り込んだ俺の肩をポンと軽く叩いて、部長は退室した。
それに続こうとした課長が足を止めて、俺を見下ろす。
「小野寺」
見上げると、荒木課長の厳しい顔。
「人事の誘いがなくても、お前の昇進は真っ当なことだ。つか、遅いぐらいだと俺は思ってる。だから、妙な考えを起こすなよ」
そう言い残して、課長は出て行った。
バタンとドアが閉まった途端、はあーと長い息を吐き、机に突っ伏す。
さすが、課長。何もかもお見通しだなぁ…
谷嶋の猛アプローチ。
人事部への誘い。
総務課での昇進。
全部、堀ちゃん抜きには考えられなくて。
「俺、堀ちゃんで、世界が回ってるなぁ…」
フフフ…と不気味に笑った独り言。
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