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すると、見つめていた背中が振り返る。 「ん?何か言った?」 「何でもない!何でもないです!」 ブンブンと首を横に振る。 何で、こんなに焦っているんだろう? 崖から下りても、山道はまだ急こう配の下り道。 「ほら。ここ、足元滑るから」 差し出されるゴツゴツした大きな手。 腕に浮き出ている血管の隆起。 女性には無い質感。 「堀ちゃん?」 つい見入っていたら、小野寺さんが訝しげに見ている。 私ってば、何?欲求不満!? 小野寺さんは至って普通で、ドギマギしているのは私だけ。 熱い顔を誤魔化すように、私は差し出された手を握った。 すると、ギュッと力強く握り返された手。 そして、グイッと彼の傍へと引き寄せられた身体。 ドクン。 「うっ…!」 もう一度、大きく弾む心臓。 胸の痛さに我慢できず、声が漏れ出た。
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