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あー…これって、俗にいう『吊り橋効果』じゃないの?
でも、あれって、二人で吊り橋渡ってドキドキしたことを恋だと錯覚するってやつだよね?
自分がそんな紛い物のトキメキに踊らされているなんて、バカみたい。
だって、相手は、昨日と何にも変わってない。
私を意識してるなんて…全然ない。
目の前の背中をじっと見据えて、唇を噛みしめる。
そう…これは紛い物のトキメキ。
あくまでも恋の練習。
これは、本物…じゃない。
本物じゃないんだから!
懸命に自分に言い聞かせる。
「堀ちゃん!」
「な、何ですか?」
物思いに耽っていたから、突然呼び掛けられ、ハッとして顔を上げる。
「下山したら、ランチしに行こうよ」
「…そうですね」
人の気も知らず、笑顔で話を振る小野寺さん。
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