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何だ?その捨てられた子犬みたいな顔は…
なぜ、ここまで彼が渋るのかが気にかかる。
「…どうしたんですか?」
「だって……相手…前田さんだよ?」
「げッ…」
思わず、顔の表情が歪んだ。
「ほら…やっぱり」
前田の名前を出せば、私が嫌な顔をするのを小野寺さんは解っていたのだ。
「だから、俺が行くよ」
小野寺さんが立ち上がろうとするが、私は首を振る。
「いえ、私が行ってきます。小野寺さんの、マジで急ぎですもん。大丈夫ですよ。書類を受け取るだけなんですから」
「ホントに?」
「ハアー…心配しなくても、ケンカを吹っ掛けたりはしませんよ」
過去を踏まえて応えると、フッと苦笑いする小野寺さん。
「じゃあ、頼むよ」
「はーい。行ってきます」
手をヒラヒラさせて応え、総務課を出た。
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