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その日の夜の夢に、彼女が現れた。
彼女はひたすらに僕から遠い闇の中で寂しそうに微笑んでいた。
僕は走る。這いつくばってでも彼女の方へ、否、光にたどり着く為に。
闇の中には蒼白い星が揺らめいていた。少しだけ僕の呼吸で空気が振動すると、波のように広がる光が確かに僕の足元を照している。
彼女まではひどく遠い。だけど足を止めていられない。道の途中は目に映らない。でも、辿り着いた先に彼女だけを捉えられたらそれでいいのだ。
遂に、僕は彼女の元にたどり着いた。
僕は軽い魂だけの彼女を抱き締めて、好きだ消えないでくれとひたすらに告げた。
でも、彼女は悲しそうな顔をして僕にこう言った。
「もう、私は時間がないの。………だから、ごめんね、俊也」
僕の名前を呼んだ彼女の魂はふわりと浮かんで昇っていく。
「大好き……俊也」
「……嫌だ………嫌だぁぁぁぁ!!」
僕の夢は、ここで途切れた。
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