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僕は真夜中に目を覚ましたらしい。ベランダに出ると夏と云えども冷えた空気が僕の肺に入って染み渡る。
この空に輝く星は数多幾千泡沫と消えた想いを空へと放ったものでできているのかもしれない。
そんな輝きから生まれた光なら僕も燦々と浴びてみようかと思う。
僕はこんな気持ちを知っただけでも幸せだと言えるのだろう。
いくら胸は爛れ締め付けられてもどうか儚い恋の感情を咎めないでほしい。
せめてこの気持ちはしんとこの夜で眠りに就かせてほしい。
「………っ、ぁぁ……っ……!!」
僕は声にならない言葉と嗚咽を繰り返しながら、ひたすらに泣いた。
「蜉蝣という昆虫を知っている?」
「いや、知らない」
「生まれてもすぐに死にゆく儚い虫よ」
「……それが生まれる理由は?」
「私も、わからないんだ」
命も、想いも、儚い。
だからこそ今日の夜空は星が綺麗なのだ。
僕はこの星の中の彼女の魂をぼんやりと探していた。
明日も、蜉蝣を描きに行こう。
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