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僕は右手を下ろした。成る程、僕は彼奴の言いたいことを理解した。普段の僕は「まだやれる」とか「まだ進める」とかを勝手に思っていた。本当に、僕は身の程を知らなかったのだ。
「『空の井戸からは水は汲めない』、と」
全く、誰が味方で敵なのかすらわからないこの世界は、何も信じられなくなる前に去ってしまいたかったのだ。空の井戸なんて、存在する理由もない。
「……ん?」
僕は『暗闇』が具合悪そうに蹲っているのを見た。
「悪い物でも喰ったのか?」
「……うん」
ぱっ、と胃の中が明るくなった。白熱灯がチラチラと再びついたのだ。
「……何を喰った?」
「君の心」
「……え?」
「つい光を求めてしまう心って不味いんだよ」
彼奴は、もう僕の心を喰っていたのだ。
結局、なんだかんだとココでグダグダ言っていても、光を欲していたのだ。
でも、その光を求めていた心は、もう、僕の中にはない。
パックリと開いた僕の穴にも、羽虫が集まっているようだ。もう少ししたら、蛆が集るのかもしれない。 僕の体はゆっくりと腐肉になっていくのだ。否、その前に、この酸っぱい胃液の海に溶けてしまう方が早いか。
僕の体、という下らないものはこの海に沈めばいい。
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