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「……もっと消化してよ……」
まだ、僕の足元がゆっくりと溶けている程度だ。痛みは、全くない。
「嫌だ」
くつくつと笑っているようにも感じられる『暗闇』の声。喉元過ぎれば熱さを忘れる、という諺の通り、さっきの具合悪そうだった様子など忘れてしまっているようだ。
「僕、暫くは君と戯れると決めたから」
僕の視界が歪む。汚いものも、沢山の柵も、溶かされて同時に浄化されているのだ。
そう。僕自体が消化され、浄化される。
「……わかったよ」
僕が溶けて消化されて浄化されるまで、僕は待つことにした。
最早溶けかけた右手で遂に僕は『暗闇』の手に触れた。
ひんやりとして、氷のような手。でももう間もなく、僕は沈む。
「また……ね……」
遂に、僕の全てが、沈んだ。
暗い胃の中で、『暗闇』はご機嫌そうに微笑していた。
「楽しかった……。また来てほしいな……」
湿った壁が蠢くように動き、次の食物を待っているようだった。
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