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Transience
僕は夏になると、近所の水辺に立ってイーゼルを立てることが多い。
勿論、夏の水辺は蚊が多く、日陰は冷えてるとは云えども、快適とはほど遠い。
それでも、僕は、ここがどうしようもなく好きなのだ。
夏の日に水辺を飛ぶ蜉蝣が、何故か愛しく感じられるから。
蜉蝣の軽やかな羽音の調べは優しい子守唄のようで美しい。
つまり、僕は蜉蝣が好きなのだ。
生まれてすぐに死にゆく儚い姿は正に泡沫のようで水辺に似つかわしい。
僕はキャンバスにその風景を描く。
緻密な翅と細い身体。蜉蝣の姿は華奢な女性の姿にも酷似している。
僕は細い絵筆で翅に色を重ねる。
だが、残念ながら、僕は絵が上手ではない。
既に炭酸が抜けて甘い砂糖水でしかないサイダーを口に含む度にキャンバスの上には幾つもの蜉蝣が飛ぶ水辺の風景には決して見えない絵が浮かび上がる。
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