戦国余話

さもあらばあれ

招かれた諸侯達は、茶碗に入った茶を一口ずつ飲んで次の者へと回していった。

しかし、病を患った（と思われている）吉継が口を付けた茶碗に皆、口を付けようとはしない。吉継の隻眼の先では、かかってもいない病を厭う者達が茶を飲んだフリをして、残ったままの茶を回していく。

（さもなし）

声に出さずに呟いた吉継だったが次の瞬間、そんな彼の見ている前で茶碗が大きく傾いた。