さもあらばあれ

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もっとも、茶坊主風情と侮られる三成に感謝する者はいない。むしろ小賢しい真似を、と眉を顰める者すらいた。 (賢いのだから、もう少し要領が良ければ……いや、それでは『三成』ではないか) 仕方ない、と声に出さずに締め括った吉継の左目は、愛しげに細められていた。 童(わらべ)のように一途で、人の心の機微に疎い――そんな磨く前の珠のような男だからこそ、三成は秀吉と吉継の心を捉えるのだ。 ―終―
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