キスだけで、いいよ

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全国的ではないけれど、県内ではそこそこ有名な神社だから――。 「なんでこんな人多いの?」 「ってか屋台まで出てる。まるでお祭り騒ぎね」 ふたりが言うように大晦日というよりまるでお祭りの夜のよう。 「あー、あの熱々じゃがバター食べたい!」 「私は甘酒、いやいっそ熱燗がいい!」 そんな声を聞きながら参道を歩いていく。 「あっ、すみません」 人が多すぎてぶつかっても誰に謝ればいいのか分からないほど。 「美穂」 「え?」 その人ごみの中、美穂の手を誰かが取った。 勿論その誰かなんて――。 「美穂はすぐに迷子になるからね」 「迷子なんてっ」 「何度なったか数えてみようか?」 「……結構です」 「あれ? お姉さん達、見えなくなったね」 「え?」 言われて辺りを見回してみるけれど……。 「ほら、迷子だ」 「そんなの先輩だって!」 「うん、ふたりで迷子だね」 「……ですね」 迷子もふたりなら焦ることはない。
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