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「ああ、君は危険人物だからね。…縛らせてもらったよ。」
陽一とかいう男が無表情でそう言った。
「今の…死んだ人間を生き返らせられるって話…本当ならば、助けたい人がいるんだ!!」
僕は興奮していた。
「おじいさん、僕は冷静じゃなかった…謝ります。本当にすみませんでした。」
「いや、助かったからわしはいいが…のう、陽一。こやつがカメラを選んだのではなく、カメラがこやつを選んだ、としたらどう思う?」
陽一は首を傾げた。
そういえば…あの時。
カメラを選ぼうとした時。僕は手前のシルバーボディを手に取ろうとして…、
「耳鳴りがした。…で、奥のブラックが物凄く気になって、つかんだ瞬間、耳鳴りが消えたんだ。」
「ほう。やはりおぬしは選ばれたのじゃな。」
「嘘、かもしれないよ。」
陽一が僕をにらむ。
「嘘じゃない!…僕は丸みのあるボディのカメラは普段ならば絶対に選ばない。こだわりがあるんだ。…今にして思えば、あのカメラを選んだのは自分の意志ではないよ。」
信じてもらえるだろうか。
じいさんの方は「カメラが人を選ぶ」という感覚を知っているようだが…。
「慎也君。…僕はね、以前やはり君のように、ここでカメラを買ったある人間に、大事な人を殺されているんだ。…そいつの時も、君と同様に耳鳴りがした、との証言がある。」
「デス・フォーカスは1台だけじゃないのか?」
陽一は首を縦に振った。
「君の所有以外に、もう1台ある…いや、あった。それは僕が破壊したからもう存在しない。実際に世の中に何台散らばっているのかは、分からない。誰が、何の目的であれを造ったのか…それも不明だ。」
分からない事だらけだな。
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