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「池谷紫音の…親ですか?」
施設長は、優しそうな態度が一変し、まるで怪しむように僕をジロジロと見た。
「はい。いるんですよね?…娘さんが亡くなったことを、伝えられたんですか?」
僕はカマをかけた。
池谷さんの親が生きているかどうかは、賭けである。
「事件が解決してから、ゆっくり…と思ってたんです。何せ、自分の娘を捨てるような母親ですから。」
母親がいるのか。
「もう既に彼女は別の家庭に納まっていますから。…娘がいることは秘密にして欲しいと、頼まれているので。」
都合のいい話だな。
娘を捨て、自分は幸せに暮らしているというのか?あまりに虫が良すぎないだろうか。
「僕は池谷さんと…結婚する予定でした。絶対に他言はしないと誓います。どうか、彼女の死を伝える役目を、僕に与えてくれないでしょうか?」
施設長は、深いため息をつくと、僕に母親の連絡先を教えてくれた。
あれ…?
この住所。うちの近所じゃないか!
地下鉄を乗り継いで、40分ほどの所に、母親は住んでいたと言うのか?
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