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「よ、おかえり!」
田中がスッキリした顔で、僕を出迎えてくれた。
乱雑だったテーブルの上が、きれいに片付いている。
さすが、マメな男。
しかし、僕はあぐらを組んだ彼の膝の上に乗っかっているソレを見て、愕然とした。
「田中…カメラをどうしたんだ?」
「ん?ああ。台所にあったから。…ちょっと見せてもらってたんだ。まあ、俺は使い方も分からんけどな。」
心臓が早鐘を打つ。
「何か、写したか?」
「まさか。他人の物を勝手にいじらないよ。…何か、カッコいいなと思ってさ。」
ほっと胸を撫で下ろす。
しかし、次の瞬間、田中はいきなりカメラのレンズを僕に向けてきた!
「やめろッ!!撮るなッ!!」
僕は床に身を伏せた。
田中はびっくりして、カメラを落としそうになっていた。
「小西…ごめん。これ、お前の大事な物だったんだな…すまん、許してくれ。」
「い、いや…まあ…そうなんだ。取り乱して、ははっ…僕こそ、ごめん。」
田中、変に思ったよな。
絶対、変に思ったはず。
「ほら、フィルム入ってないしさ。…無駄だから撮っても。それにさ、ジャンクだから、所詮、壊れやすくてさ…!結構神経使うんだよね!!」
焦れば焦るほど、ペラペラと嘘が出てくる。
田中は「分かった、分かった!」と最後は辟易した。
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