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「なあ、小西。俺、考えたんだけど。」
田中が急に真面目になる。
「夕べさ。勢いでお前んち来ちゃったけど、家にいなかったらさ、返って怪しまれるよな。…俺、自分ちにいた方が良かったのかもしれないな。」
そうか。
田中の容疑がすっかり晴れたわけじゃないんだ。
僕は、君が無実だって知っているけど。
「なあ、田中。堂々としていろよ。…証拠なんて出るはずもないんだ。そのうち警察も諦めて、捜査を打ち切りにするだろ。」
「小西…。」
「それに、池谷さんには悪いけど、今は鬼ユリの事件の方で、警察は忙しいだろ。新進気鋭の女社長が恋人に殺されたとなると、マスコミも動くだろうしな。たかが中小企業の1社員が死んだのとはわけが違うんだ。」
「なんだか、小西にそう言われると、すごく安心出来るよ!!ありがとうな、俺、お前と友達で良かったわ!」
ありがとう、か。
僕にはそれを言われる権利はないんだ。
なあ、田中。
お前が僕の立場なら、どうする?
本当の友達なら、真実を打ち明けるべきだろうか?
田中は僕を警察に売るだろうか…?
思いを巡らせているうちに、田中は玄関から「またな!」と言って出て行ってしまった。
僕は、卑怯なのだろうか…。
しかし、同じ立場に立たされた時、一体何人の人間が、真実を告白出来るだろうか…?
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