Shot【2】

4/39
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
「なあ、小西。俺、考えたんだけど。」 田中が急に真面目になる。 「夕べさ。勢いでお前んち来ちゃったけど、家にいなかったらさ、返って怪しまれるよな。…俺、自分ちにいた方が良かったのかもしれないな。」 そうか。 田中の容疑がすっかり晴れたわけじゃないんだ。 僕は、君が無実だって知っているけど。 「なあ、田中。堂々としていろよ。…証拠なんて出るはずもないんだ。そのうち警察も諦めて、捜査を打ち切りにするだろ。」 「小西…。」 「それに、池谷さんには悪いけど、今は鬼ユリの事件の方で、警察は忙しいだろ。新進気鋭の女社長が恋人に殺されたとなると、マスコミも動くだろうしな。たかが中小企業の1社員が死んだのとはわけが違うんだ。」 「なんだか、小西にそう言われると、すごく安心出来るよ!!ありがとうな、俺、お前と友達で良かったわ!」 ありがとう、か。 僕にはそれを言われる権利はないんだ。 なあ、田中。 お前が僕の立場なら、どうする? 本当の友達なら、真実を打ち明けるべきだろうか? 田中は僕を警察に売るだろうか…? 思いを巡らせているうちに、田中は玄関から「またな!」と言って出て行ってしまった。 僕は、卑怯なのだろうか…。 しかし、同じ立場に立たされた時、一体何人の人間が、真実を告白出来るだろうか…?
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!