Shot【2】

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僕は、自分が女々しいと思う。 また、池谷さんの施設に来ていた。 彼女を殺したかもしれないという、罪悪感? いや、僕は自分でも気付かぬうちに、彼女を…とても好きだった事に気がついたんだ。 今更だよな。 苦しみと共に、何とも形容できぬ感情が、僕の中に生まれつつあるんだ。 間違えても僕の手には入らなかったであろう彼女。 その彼女を殺してしまった僕。 少なくとも、彼女の人生に関わる事が出来た…彼女の命を左右する力を有していた…この僕が。 黒く、どす黒く…そして甘美な感動。 僕の中に、こんな腐った感情が存在するなんて。 まるでストーカー殺人犯だな。 でもね、池谷さん。 僕は君の笑顔を見ているだけで、本当は充分だったんだよ!! 君が生き返るなら、なんでもするよ…だから、僕を許してくれ。 僕を、嫌いにならないで…。 「うっ…!」 涙が出た。 初めて…彼女が死んでから初めてだ。 鬼ユリのために泣くつもりはないが、池谷さんのためなら、枯れるまで泣けるよ。 「…なあに、お兄さん?紫音のボーイフレンド?」 ふと。 僕の側に、見知らぬ女の子が立って、ニコニコしながら無遠慮にひとの顔を覗きこんでいた。 僕は慌てて涙をぬぐう。 「ただの同僚です。…今日、彼女の火葬かな、と思って。」 「ふうん?」 女の子は面白そうに僕をじっと見つめた。 「紫音の遺体はね、警察が持っていったよ。まだ事件が解決してないからね。」 「そうなの?」 火葬になれば、証拠がなくなるから…かな。
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