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「小西…慎也。28歳か。僕と同い年じゃないか。じいさん、いつも言ってるだろ?客を見て、物を売れって。」
「わしも年かのう。こやつがカメラをキラキラした目で眺めておったからな、つい。しかし、おぬしが来てくれて命拾いしたわい。」
気がつくと、僕の目の前には二人の人間がいた。
「おお、もう気がつきおった。」
僕が殺したはずの、ジャンク屋店主。
なぜ、生きている?
「兄さん、駄目だよ。無闇矢鱈に人を殺しちゃあ。」
おそろしく背の高い男。
身なりは普通の青年だが、目付きが死んだ魚のように濁って、しかも鋭い。
「初めまして。…僕はじいさんの孫の陽一と言います。慎也君と呼んでもいいですか。」
見ると、僕の社員証をひらひらさせている。
「…返せよ。」
「態度悪いな。ひとんちの爺ィを殺しておいてからに。」
そうだ。なぜ、爺ィは生きている?
「慎也君はこのカメラの機能を充分に理解していない。…デス・フォーカスなんて名前がついているけどね、実は奪った命を戻す事も出来るんだ。…現在、もう1つの命がこのカメラの中に入っているようだね。枚数カウンターが1となっている。」
…は?理解出来ない。
1度奪った命を、戻す事が出来る?
僕は立ち上がろうとして、気がついた。
手足が拘束されていたのだ。
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