殺意の足跡

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突然、背後から声が飛んできた。 鑑識とも違う聞き慣れない声に振り向くと、そこに立っていた人物に目を剥いた。 紺色の大衣を纏った、髭面の男が腕を組んでいたのだ。 天巌寺の住職、輝沼照玄。彼とは、青春期を供にした旧知の仲だった。 街中で会ったならば、「よう」と声を上げたかもしれないが、ここは立ち入り禁止の現場。 本来、一般人が踏み入れていい場所ではない。 「照玄っ、どうしてお前が」 「どうしてとは失礼だな。呼んだのはそっちであろう」 そう言って、顎髭を撫でながら遺体を覗き込む照玄に、咄嗟に滝沢に目配せた。 .
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