夏の呼び声

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日生はそれで力を使い果たしたように長持に突っ伏すと、ほっと息を吐いた。 「こんなの売ったら、罰が当たっちまうよ」 再び外に出ると、頭上には元通り抜けるように青い空が広がっていたが、辺りは静かであった。 ふと、遠くに目をやると、灰色の雲がうっすらと立ち込めていた。 「降り出す前に、早めに帰らんとな」 一人ごちると、日生は荷物を背負いなおして、いつもの調子で歩き出す。 「今度は寄り道せずに行こう」 言い聞かせるように呟くと、若者は下り道を進む足を早めた。
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