第1章

2/35
前へ
/495ページ
次へ
クリスマスのイルミネーションが大通りを彩るこの季節。 寒そうに行き交う人々は自然と足早になっていた歩幅を緩め。 うつむきがちになる顔を上げて、頬を弛める。 恋人たちは寄り添い合い、視線を交わしては愛を囁く。 そんな後ろ姿をなるべく視界に入れないようにして、私は背筋を伸ばしてそこを通り過ぎた。 毎年趣向を変えて、綺麗に飾りつけられるイルミネーション。 なんの因果か、まだ一度も恋人と呼べる相手と見に来たことがない。 それでも毎年ここを通るのは、職場が目の前にある。 ただそれだけの理由だった。
/495ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2996人が本棚に入れています
本棚に追加