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「さあ、今度こそ帰るから」
「いや!もっと遊んでいたい!」と渋る加奈江を追い立てて、出口へ向かう政は、ここでもチラリと太陽の塔を見た。
サーチライトを両目から光らせて光線はまっすぐに宙を飛ぶ。
――やっぱり、気になるのに。
ねえ、行ってみる? テーマ館。入ってみる?
ひと声かけようとした加奈江は、彼に「出口はこっち」と促される。
こっちこっちと招かれるように、ふたりは一方通行の人の列に加わったが、様子が変だと気づいた時は、出口とは全く違う方向へ向かう人の流れに乗り、引き返せなくなっていた。
立ち止まれば抜け出せたのに、するすると導かれるまま行く先は、何かのパビリオンとしか思えない。
「どうするの?」と加奈江。
「どうもこうも……。このまま行くしかないだろう」と不満げな政。
「私はいいわ」
加奈江は言った。
「だってまだ帰りたくなかったもの」
「カナ」
政は呆れて、家の中で呼ぶように加奈江に言う。
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