【3】日本万国博覧会

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「さあ、今度こそ帰るから」 「いや!もっと遊んでいたい!」と渋る加奈江を追い立てて、出口へ向かう政は、ここでもチラリと太陽の塔を見た。 サーチライトを両目から光らせて光線はまっすぐに宙を飛ぶ。 ――やっぱり、気になるのに。 ねえ、行ってみる? テーマ館。入ってみる? ひと声かけようとした加奈江は、彼に「出口はこっち」と促される。 こっちこっちと招かれるように、ふたりは一方通行の人の列に加わったが、様子が変だと気づいた時は、出口とは全く違う方向へ向かう人の流れに乗り、引き返せなくなっていた。 立ち止まれば抜け出せたのに、するすると導かれるまま行く先は、何かのパビリオンとしか思えない。 「どうするの?」と加奈江。 「どうもこうも……。このまま行くしかないだろう」と不満げな政。 「私はいいわ」 加奈江は言った。 「だってまだ帰りたくなかったもの」 「カナ」 政は呆れて、家の中で呼ぶように加奈江に言う。
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