12人が本棚に入れています
本棚に追加
「お前、夜遊び好きだったのか?」
「あら。そんなこと」
言いかけて、どんどん闇に包まれていきながら、加奈江はあっけらかんと答えた。
「あるかも」
「ええ? 何だって?」
「だって。誰かさんといっしょだもの」
新婚旅行でしょ、と小声でポツリ。彼の方へ手を伸ばした。
その手を、暗闇の中で政はひときわ強く握った。
寄り添いながら先を行くふたりを待っていたものは。
政が毛嫌いし、実物を見て意識して止まなかった太陽の塔、つまりテーマ館の入り口で、すでにふたりはパビリオンの中にいた。
おやおや。とんだ出口だこと。
加奈江はクスリと笑う。
訪ねるまでもなく、あちらから招かれたのね。
これは。逃げられないわ。
彼女は隣の夫の気配に心を配る。
政は観念しているようで、小さくため息をついていた。
最初のコメントを投稿しよう!