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そして、テーマカラーである赤で彩られた、原爆を模したモニュメントと家族像。
開発していく一方で進んだ技術が行き着く先は明るい未来だけではない、諸場の刃の危険。
一寸先は闇で脆く儚い――
けれど、人は生きていく。
天空へ向かって手を伸ばす、人類の始祖のように。
そして、長いエスカレーターを下っていく先は、女性の子宮を模したモニュメント。
天から下って、地に降りて。
パビリオンの展示は終った。
中に入ってから、ふたりは全く言葉を交わさず、手を握ったままだった。
人に押されてつっかえながら、後ろの人に迷惑そうな目で見られながら。
政は無言で全ての展示を納得するまで眺めて、気が済むまでその場から動かなかった。
手を痛いほど握られて隣に立つ加奈江は思う。
自分の意識が取り込まれて彼に吸い寄せられていく。
なつかしい。
この感じは。
久し振りだ。彼が意識を集中させて何かを得ようとしている。
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