第1章

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私は恋をしない……ではなくて、できないの間違いかもしれないと電車の座席でガタゴトと揺らされながらとりとめのないことを考えていた。 二十歳になっても私には彼氏と呼ばれる人はできていない。他の知人友人は恋だの結婚だと忙しいが私には全くそういう話はやってこない。ただ、私が怠け者でしかなのかもと思うとうんと納得してしまった。ダメじゃん。 好きな人がいるわけでもなければ、特別に仲のいい男子がいるわけでもない。というか知人友人の言うところの『高学歴、高収入のセレブな男子』とか『結婚するんだったらやっぱりセレブ婚』みたいな風潮がいまいち理解できない。愛か金というまではないが、私の恋愛観でいうなら相手の内面を見るべきだ。相手がどんなに金持ちでもブサイクではなんだか嫌だし、あまり金持ちじゃなくてもイケメンならいい? んん、よくわからん。むむむと眉間にシワを寄せていると、目の前でプッ吹き出す声が聞こえた。笑われた? 「何か?」 「いや、さっきからコロコロ表情が変わるからさ、眺めてたら笑えてきた。百面相?」 「失礼な私がそんなおバカさんに見えたというのですか」 「うん、見えた、さっきからうんうん唸ったり、小首、傾げたり、眉間にしわ寄せたり、にやぁーっと笑ったり忙しいなぁっておバカさんつーか、アホ?」 と言ってきた失礼な奴はよく見てみるといがいと端正な顔立ちだ。爽やかイケメンなんてこいつのためにあるかもしれない。というか、この展開、まるで恋愛小説の一場面みたいだ。 「おーい、聞いてる?」 「聞いてません」 「聞こえてんじゃん、で、さっきから何をそんなに唸ってんの? もしかして、あれ?」 「あれ?」 「女の子のあれ」 この日ほど、蹴り飛ばしてやりたいと思ったことはない。いや、 「~~~~~~~~~ンンンンッッッ!!!! なにすんの、つーか、めっちゃ痛いんだけど」 蹴り飛ばしていた弁慶の泣き所を、思いっきり力いっぱい。 「失礼なことを言うからです 」 「ちょっとした、ジョークじゃん」 「貴方にとってはジョークでも、私にとっては堪忍袋どころか、末代まで祟ってやりたくなるほどです」 「そこまで!? あんたって見かけによらずおっかない人?」 「さぁ。どうなんでしょうね。もう一度、くらいます?」 「いや、遠慮しとく」 「賢明な判断です。褒め上げましょう」 「そりゃどーも」
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