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こんななまめかしい話はしたくない。昨日なんてそのせいでいつもはしないミスを連敗してしまった。
「じゃあ、なんで」
「私は他人に自分の世界に入って来られるのがイヤなんです。特に爽やかイケメンみたいに遠慮もなくズカズカ入ってくる奴はもっとイヤで」
「俺にチャンスとかないわけ?」
「ありませんね。はっきり言って私は貴方のことが嫌いです」
「はっきり言うなぁー、いや、こっちの方がしっくりくるかも俄然、やる気がわいてくるみたいな」
ゾワリと胸の奥に毛虫でも入り込んできたような感覚が走った。爽やかイケメンの何気ない笑顔がどうしようもないほど憎たらしい。私の気持ちなんて全く考慮しないその態度に苛立ちが募る。やめてくれと言いたくなるがもう何を言っても耳を貸しそうにない。悪気はないんだろう。むしろ、純粋な好意だ。いつから私のことを好きだったか知らないけれど、私にとっては…………。
「あのさ、こう、望み薄かもしんないけれど、こうして一緒にいることは許してくんない? あ、うん、どうかな」
「勝手にすればいいと思います」
いつまで続くかわからないけれど、爽やかイケメンだっていつかは飽きるだろう。このノリの軽さなら他の女になびいても別に驚かない。
「おーし、俺、がんばる。恋のできない不思議ちゃんのために俺、がんばる」
「ほとんど自分のためでしょう。下心が透けて見えてますね」
「恋愛には下心は切っても切り離せません。そう思わない?」
「都合のいい理屈。あと、手を触れるの禁止」
「あっそう。ケチんぼだなぁ」
シッシッと手を振ると爽やかイケメンが爽やかスマイルを振りまいて落ち込んでいた。なんというか器用な奴。
一週間、二週間、三週間とたっても爽やかイケメンは諦めていない。諦めない。諦めるという言葉は貴方の辞書にないのでしょうと言うと、かもねーと言ってきたのでぶん殴っておいた。
「あのさー、そうやってすぐに手を出すのよくないと思うよ。爽やかイケメンフェイスが壊れたらどうすんの?」
「だったら、しこたま殴ってあげようか?」
遠慮しますと言う、爽やかイケメンに横目で見る。まだ、名前すら知らないのによくやるなぁとため息をつく。軽くておちゃらけててすぐにセクハラしようとする変態イケメン。出会った当初は疼いていた痛みもだんだん無くなりはじめていた頃のことだった。
「はーい、俺の勝ち。一万円」
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