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特に気にかけることのない言葉だった。ただし、そこには爽やかイケメンを含めた数人がたむろしていたからだ。あちらは私に気がついていない。爽やかイケメンが財布から一万円を取り出して、男に渡す。男がニヤニヤしながら毎度ありーと言うとドッと笑いが巻き起こる。何がそんなにおかしい、いや、ズキリとした痛みが胸に広がる。なんとなくこの先の展開が予想できたのかもしれない。
「まー、儲けさせてもらうわ、あの女を落とせるか、落とせないかでこんなに儲けるなんて、お前もバカだよなー。さっさと諦めればいいじゃん。今までだってそうだろ。こんなの所詮、ゲームなんだから、落とすか落とせないかだけの賭け事でしかないんだからさぁー」
恋愛ゲーム。そうでしかないのだと男は言う。爽やかイケメンも否定はしなかった。なんだよ、お前、否定しないのかよと口をへの字に曲げる。あぁ、やっぱりかともう、立ち去ろうかと思った矢先。
「俺、本気だし、確かに最初はゲームだったけれどさ、今はマジで好きなんだよ。あの人のこと、すぐ殴るけど、唐突にへんなことして驚かして笑わせてくれるしだから、そういうこと言うなよ」
爽やかイケメンの友達がいきなりどうしたんだよ。マジに何なよとちゃかすが爽やかイケメンは意見を変えるつもりはないらしい。その態度に一万円を貰った男もやれやれと肩をすくめて、財布から一万円、数枚を取り出すと、
「これ、まぁ残りは使ったから残ってねーけどさ。使えよ」
「いや、もともと俺の金じゃん」
「細かいことは気にするなよ」
と爽やかイケメン達がまた、笑う。
もう、居てもたってもいられなくて私は立ち去ろうと背中を向けて歩き出そうとした矢先、腰がズキンと痛んだ。あれ? と、思った時には腰からたくさんの血が溢れ出していた。おかしいなぁと、なんでこんなになるんだろうとおもっていると膝から崩れ落ちる。なんで? 腰から何か生えてるんだろう? というか、これって、
「お前が悪いんだ。俺のことを裏切るから、いけないんだ」
見知らぬ男が私を見下ろしながら言う。
「お前は死ぬ。もうすぐ死ぬ。そしたら俺もそちらに逝くからぁ、待っててねぇー」
なんで? と言葉にできず、爽やかイケメンの笑い声だけが聞こえ……意識が遠くなり始めた。やっと好きになれたと思ったんだけどなぁーダメだったか。
「なにやってんだよ。テメー!!」
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