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燃えるように空に浮かぶ夕日のオレンジ色の光に照らされ、園庭に伸びる大小二つの影。
左手には、小さいけれど、確かな温もりがある。
俺も親父になったんだな……と、沁々思った。
そして、つい先程誕生したばかりの尊い命に責任の重さを感じながらも、喜びは一入で……
あの時、ひねくれシンデレラに出逢ってなければ今の幸せはないよな……と、改めて彼女の存在に感謝した。
「禅、今日はパパと寝ような?」
そう、優しく問い掛けてみれば……
「きょうは、そんなきぶんではないので、けっこうです」
愛想も素っ気もなく返される。
というか、夜の誘いの際に言う華の言葉そのまんま。
「おとうさんがさびしいのなら、いっしょにねてあげてもいいですよ」
「………あーそーかよ」
どれだけ華をコピーする気なのかは、分からないが、取り敢えずは俺と華の子である事は120%間違いない。
……まぁ、家族はひねくれ者ばかりだけど、
守るべき存在がある事は、何よりの幸せだよな…
そんな風に感じた初夏の夕暮れだった。
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