おまけ⑤

7/7
22286人が本棚に入れています
本棚に追加
/596ページ
「頑張って下さい」 にこやかに手を振る華とお義母さんに見送られ、ホールの中央に向かった。 集まった保護者は、皆、子供の手製のお面を頭に被っている。 「おとうさんもかぶってください」 「…………わーったよ」 禅に言われ、渋々被る。 『さくらんぼ組のお友達ー!保護者の皆さーん、元気に踊って下さいねー!』 園長の『ミュージックスタート!』の掛け声で、スピーカーからコミカルな音楽が流れ出た。 『エビカニクスでエビカニクスで踊っちゃおーー』 左右を見ると、他の保護者は子供と一緒にノリノリで踊っている。 ……ちょっ、 ちょっと、待て。 これは、俺には無理だ。 恥ずかしさから、踊れずにその場に棒立ちする俺に、禅は薄ら笑いを浮かべて言う。 「………おとうさん、おどれないんですか?」 この一言で、俺の中で何かがブチ切れた。 「わーった、踊ってやんよ!」 やけくそになって、見様見真似で踊りながら、ふと観客席の方へ視線を向けると 奏をお義母さんに抱かせ、ハンディカムを覗く華の姿があった。 ………と、撮ってんじゃねーよ!! 華曰く 「キレッキレなダンスでしたよ。永久保存という事で」 この日が俺の黒歴史になった事は言うまでもない。
/596ページ

最初のコメントを投稿しよう!