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「頑張って下さい」
にこやかに手を振る華とお義母さんに見送られ、ホールの中央に向かった。
集まった保護者は、皆、子供の手製のお面を頭に被っている。
「おとうさんもかぶってください」
「…………わーったよ」
禅に言われ、渋々被る。
『さくらんぼ組のお友達ー!保護者の皆さーん、元気に踊って下さいねー!』
園長の『ミュージックスタート!』の掛け声で、スピーカーからコミカルな音楽が流れ出た。
『エビカニクスでエビカニクスで踊っちゃおーー』
左右を見ると、他の保護者は子供と一緒にノリノリで踊っている。
……ちょっ、
ちょっと、待て。
これは、俺には無理だ。
恥ずかしさから、踊れずにその場に棒立ちする俺に、禅は薄ら笑いを浮かべて言う。
「………おとうさん、おどれないんですか?」
この一言で、俺の中で何かがブチ切れた。
「わーった、踊ってやんよ!」
やけくそになって、見様見真似で踊りながら、ふと観客席の方へ視線を向けると
奏をお義母さんに抱かせ、ハンディカムを覗く華の姿があった。
………と、撮ってんじゃねーよ!!
華曰く
「キレッキレなダンスでしたよ。永久保存という事で」
この日が俺の黒歴史になった事は言うまでもない。
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