兄貴と蛇

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ギシリとベッドのスプリングが軋み、彼女がポツリと呟くように言った。彼女とは付き合って一カ月くらいで、こうして、肌を重ね合わせるーーーまぁ、エロい行為に及ぶのも何度目だったが彼女がこうして口を開くのはあまりない。無口ではないのだけれど、恥ずかしいのかあまり喋りたがらず俺に任せていることが多いのだ。 「ん? なんか言った?」 「いや、獣みたいだなぁーと思って」 ちらりと俺とある部分に視線が向く。あのなぁと俺は苦笑いしながら言うけれど、獣という言葉に引っかかりがあって背中の『傷跡』がズキリと痛んだ。 「これが初めてってわけでもないだろ? 」 「そうかもしんないけれどさ。ほら、お互いに裸になるわけでしょ。なんか野性的だなーって特に君が」 俺がかよと思うと、彼女がニシシシといたずらっ子の笑みをこぼした。なにかよからぬことを考えている顔だ。 「じゃあ質問。君は女の子に脱いでほしい? それとも自分から脱がせたい?」 「答えにくい質問だな。で、なぜ、二択?」 どっちかと言うと脱がせていくほうが好きだが、ここで強引に行くとお預けをくらうかもしれない。 「え? もしかして、他にも選択肢があるの? た、例えば無理矢理、押し倒して服を破いて嫌がる私を犯す……いや、獣だわ」 「どう思ったか知らないけれど、俺がそんなことしたらどうなるんだ?」 「したいの?」 「できればしたくない。なんだか傷つけそうで怖いし」 と言いながらいつからだろうこういう暴力的な思考や行為が嫌いになったのは、ヘタレではないと思いたいが彼女からすれば少し情けなくうつるかもしれない。たぶん。 「なんだ。そしたら、新しい服、君に買ってもらえたのに残念」 俺の懸念など知らないで、ぺろっと彼女が舌を出した。こいつめと俺は彼女を押し倒し、彼女も抵抗なくベッドに倒れる。綺麗だと感じる。手入れされた黒髪や整った顔立ちに小さな首筋、大きな胸に顔をうずめたいのは男としては当然の願望。 「なんだか、いじめたくなった」 「優しくしてね」 「補償はできないな」 彼女とキスをかわした。それが始まりの合図だった。 半裸のままベッドのふちに座る。呼吸は荒い、服を着たままの彼女がハァーハァーと胸で呼吸していた。 「まさか、服を着たまま、なんて、思ってもなかったわ」 「それはなにより」 と言うと彼女が背中の傷跡に触れてくる。
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