兄貴と蛇

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「知るわけないだろうが、たまたま通りかかっただけで、普通だったらお前らどうなっていたかわからないんだぞ」 と、言って俺の首筋をジーっと見つめてはぁと嘆息した。 「特にお前のような奴が混じっていれば、低い成功率が上がってしまう。お前は絶対にこんなことをするな」 何か知っている。たぶん、こいつは何か、俺の首にまとわりつく蛇について何か知っているんだ。 「俺が、俺がどうして、こんなことになるんだよ!! この首に巻きついた蛇とか、あの女とかいったいどうなってんだよ!!」 溜め込んで、溜め込んでため込み続けた鬱憤が一気に含めた感情が吹き出した。 「憑き物の一族。憑き物筋の一族だからだよ。まぁ、お前らは珍しい蛇神のようだけどな……」 が、そこまでしか聞き取れない。憑き物筋? なんだそれと疑問に思う前に首に巻きついた蛇が俺の首を勢いよく巻き付いてきた、呼吸が止まり意識が混濁する。 「『カカカ、ようやっとか、ようやっとこやつの身体を手に入れた。小童のことだからすぐにでも乗っ取れると思っておったがなかなか難儀じゃった』」 俺の声に合わせて誰かが言う。 「蛇神か。いや、民間信仰の絞りかすの集合体。自分で実体を持つことができないから個人に固執し恐怖されることで信仰をえて身体を乗っ取る。まさしく、憑き物筋らしい姑息さだ」 「『カカカ、小童、ある程度、素養があるようじゃが、妾に勝てるわけなかろうが、そこをどけ、妾を呼び出そうとした不躾な小童共を皆殺しにきて内臓をすすりとってやるかのう」』 俺の言葉で誰かが口を動かす。やめてくれ、やめてくれよ、そんなこと、俺はそんなことなんてしたくないんだ。 「残念ながら、それはできねーよ。絞りかす」 シャランッと数珠が鳴り響く。 「『なに?」』 「そいつはな、俺の、まぁ、友達だった奴だったんだよ。だから、その身体を返してもらう」 ジャランっと数珠を握りしめ、おそらくお経らしきものを唱えがら突撃してくるが、俺の中にいる化け物はゆうゆうとした態度で振り返り、そいつにむかって腕をかざした、いや、かざしただけじゃない、そのまま伸びた。真っ白い腕がそいつの首に巻き付いて、そのまま壁に押し当てられた。 「『ぬるい、ぬるい、ぬるいのぅ。妾は民間信仰から生まれたのじゃぞ。坊主が読むものなど効くわけがなかろうが、このまま首をへし折るか? それとも目玉をくり抜くか?』」
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