兄貴と蛇

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かはっと、そいつはせき込んだ。宙づりになりながらニヤニヤと笑い。くっだらねーんだよと言った。 「くっだらねーんだよ。ほんとに、なんでこんなにうまくいかないんだよ。いつもいつも、親友だって言ってくれた奴を助けられないで、よくわかんねー絞りかすに乗っ取れそうになってるし、打つ手がねーなんてなぁ。もう、仲直りもできないなんて」 コロンッと数珠が落ちる。俺の意識が揺れる。なんだよ、それ、なんだよそれは!! 「うざったくて、めんどくさくて、うっとうしいのに俺と親友だなんてバカみたいなことを言いやがって……」 なんだよそれは!! 仲直りしたい? 親友? そんなの俺だって思ってるよ。そりゃ一方的に突き放した俺が悪いんだよ。お前はなんにも悪くないんだよ!! 「『なっ、何をっ、小童め、まだ、意識が残っておったか。ぬっ、くぅ!? やめろ!!」』 何をするつもりだ? 決まってるだろ。俺は身動きの取れない身体を強引に動かして椅子にぶつける。 両手がひとりでに動き、俺の首を勢いよく掴んだ。ぐいぐいと食い込んでくる指に気道が塞がるが、俺はかまわず歩く、後ろ向きに 『小童、調子に乗るなよ。この程度の、ことで……』 これでどうにかできるかどうかなんて思っていないけれど、たぶん、あいつが逃げる時間くらい稼げるはず……。 もぞもぞと背中が動き回る、こいつ、 『カカカ、妾は死なん。小童、お前の死をこの学校に浸透させる。蛇姫のまじないを下敷きに広めてやるっ。妾は信仰で生きるだから、小童の他にも乗っ取れる身体を探してやる』 蛇が俺の背中を蠢く。もぞもぞと気色悪さに俺は背筋が寒くなった、内臓をそのまま触れられている感覚だ。 「そんなことさせねーよ」 と、声がした。あいつが俺の背後に立っている。まっすぐ数珠を片手に持ってる。そしてゴメンなとそんな声が聞こえ、背中に激痛が走る。いぃ!? いっ、イギギギィィイイ!! 裂かれた? 背中をあいつの手が鮮血に染まっている。皮膚が裂かれ教室の床に血が広がっていく。のたうち回ることのできず、しかし、それだけでは終わらない。そいつは背中に思いっきり、片手を突っ込んできた。目を見開いて、胃が雑巾のように絞られ胃液が喉から吹き出した。目の前がチカチカと瞬く。ずっ、ずるりと背中から何かが抉り出された。 「あっ、なんだそれ」 「白蛇だよ。つーか、しゃべんな、いま、救急車、呼ぶから」
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