兄貴と蛇

9/9
前へ
/10ページ
次へ
いや、そんなことより、お前、俺の背中、裂いたよな。いったいどうやったんだよと聞くこともできず俺はうつろう意識の中であの女の声とあいつが話しているのが聞こえたが、すぐに首を跳ねられてポロリと落ちた。 その後のことは正直、語るほどのことではない救急車で運ばれた俺はすぐに手術、入院、そのまんま転校となった。俺に相談することなくまるで、かなり前から用意されていたような手際の良さで引っ越しが決まった。拙い知識でしかないが、あの時のあいつの言葉を調べると、憑き物筋とは、民間信仰によるもので、犬や狸を生け贄に捧げることで、憎い相手や家系を呪い、その変わりの富を得るというもので、そういう家系はけってして憑き物筋であることをあかさなかったというらしい。もしも、バレれば迫害されてしまうためとかなんとか。 でも、俺にはこの経験からは雪女の伝説を連想した。好きな人と一緒に居たいが妖怪と人間ではけっして相容れずに暴落の末路しかまっていない。もしも、俺があの時、何も言わなかったらあの女ともうまくやれてたのかもしれない。 「どうしたの? 何か、考え事?」 「なんでもないよ。というか、もう一回やるか?」 「いいよ。今度は服を脱いでね」 と言ってシュルシュルと服を脱ぐ彼女を見ながら、あいつに会ったら一発、ぶん殴ってやる。どこにいるかもわならない、あいつのことを考えて、彼女が俺を振り返り赤い瞳で見つめ細長い舌をチロチロ出していたことには気がつかなかった。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加