察してちゃん

9/12
前へ
/93ページ
次へ
「どういう事ですか?」 千尋は素敵な笑顔で言うと、健斗は詳しく聞きたいのか、千尋の言葉に被せ気味に問いかける。 そして今度は亜美が説明を始めようと口を開いた時、亜美に被せる様に千尋が幽かに口を動かす。 その様子を察知した亜美は、千尋に譲るように口を閉じた。 さすがは察し合う女社会で過ごして来た亜美だ。 「説明します」 どうやら説明スイッチが入ったようだ。 「例えば、付き合いたてのカップルがショッピングモールにデートに来ました。そして昼食を取ろうと、いくつものレストランが並ぶエリアに足を運びます。そして男が『何か食べたい物ある?』と女に問いかけます。しかし女の行動は小さい頃から親によって決められて来た為に、自分で決断するという事が出来ません。だから男の質問にはっきりとした答えを返す事が出来ません」 真剣に聞く健斗達は、千尋が説明する世界観を頭に入れ、次の言葉を待つ。 「男は女の好きな物を食べさせてあげたいと言う優しさアピールの言葉だったのですが、決断力の無い女にとっては、プレッシャーでしか無いのです。そして焦る女は『何でもいいよ』と答えてしまいます。あとは今回の事案と同じような会話をしてしまいます。男が『○○なんかどう?』と提案しても、決断力が無い女は決められないのです」 そこまで話すと、スイッチが切れたのか千尋は長いセリフを話した事による酸素不足を補うように、深い呼吸をし息を整える。 「今回の事案の女と、今の事例の女では何が違うか分かるかね」 千尋は健斗に問いかける。 健斗は真剣な表情で、数秒思考すると、口を開いた。 「今回の女は自分の思い通りに男を動かせないと気が済まない性格で、今の事例の女は決断できない自分を嘆き、責めている……という事ですかね」 自信が無いのか、最後は声が小さくなってしまったが、健斗の言葉に満足したのか、千尋は満面の笑みを浮かべていた。 「そうだ。では男はどういう対応をすれば良いのかを考えて行こう。まずは私が話した事例の女だ」 千尋はコーヒーを口にしようとしたが、カップの中は空になっており、その事に気づいた亜美は千尋のコーヒーを淹れに行く。
/93ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加