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千尋の言葉に亜美は苦笑いをし、話を逸らそうとする。
「きょ、教授。本題に戻りましょう。脱線してます」
亜美の指摘により、千尋も気づいたのか咳払いをした。
「そ、そうだったな。抽象的な案を出して範囲を狭めるのは良い。それでも『察してよ』が続くよなら別れた方が幸せだな。良く『女心が分かって無い』などと言う女がいるが、そういう奴に限って男心を考えようとしない。こういう察してちゃんもそんな女なのだろう」
こうして今回の事案は、千尋の言葉で締めくくられた。
翌日。
午前の講義が終わり、生徒達は荷物をまとめている。
すると、昨日聞いた音域の高い声が健斗達の耳に届いてきた
「今日は何食べる?」
健斗は気づかれないように、遠慮がちにその女を観察する。
すると驚いたことに、女の話相手は昨日とは別の男だった。
「そうだな。とりあえず外に出ようか」
男は女にそう促すと、2人で中睦まじく講義室から出ていく。
その姿を見届けると、今度は昨日の男の声が届いてきた。
「もう新しい男かよ」
「まあ、あのまま付き合ってても幸せにはなれなかったさ。飯行こうぜ」
昨日の男は、男友達と講義室から出ていく。
その背中を見届けた健斗は、隣の正輝の方へと視線を向けた。
「なあ正輝……恋愛って難しいな」
「そうだな。俺も教授と出会って、思い知らされたよ」
そんな会話をした2人は、昼食をとる為に食堂に向かった。
2人の研究はこれからも続く。
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