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「それで、君は相手の女に対して、どう思ったのかね」
健斗は過去のトラウマを思い返しながら、重くなった口を必死で開く。
「なんで……なんで急にそんな事言うんだよって思いました」
悲痛な叫びにも似た、健斗の声は、この教授室を覆い尽くすように、暗い空気を醸し出す。
気づくと健斗は、右手で握り拳を作り、名一杯力を入れていた。
そんな健斗の様子を見た面々は、かなり辛い想いをしたと理解する。
「健斗……」
正輝はこんな親友の姿を見たのは初めてなのか、心配で思わず言葉を漏らした。
だが、他にかける言葉が見つからず、沈黙する。
そんな様子を見た千尋は、健斗に意思確認をするように問いかける。
「君にとっては突然の別れ話だったかもしれない。だが、相手の女が友達とどんな女同士の会話をしていたか知りたいか?君の心の傷をえぐる事になるかもしれないが」
千尋の言葉に少し沈黙し、思考を凝らしていた健斗だが、何かを決意したように口を開く。
「知りたいです。本当の事を。正直女性が何を考えているのか分かりませんので」
健斗の意思を確認した千尋は、亜美へと視線を向ける。
そして亜美は千尋と視線を交わすと、真剣な表情で頷いた。
それを確認した千尋は、演劇スイッチを入れ、口を開く。
「健斗君と付き合いだしてさぁ。少し経つんだけど……何か合わないんだよねぇ」
亜美も千尋に合わせるようにスイッチを入れた。
「えぇー。健斗君優しそうじゃん。何が不満なの?」
「優しいんだけどさぁ。ちょっと優しさの方向を間違えてるって言うかぁ」
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