恋愛ホルモン

10/16
前へ
/93ページ
次へ
「それで、君は相手の女に対して、どう思ったのかね」 健斗は過去のトラウマを思い返しながら、重くなった口を必死で開く。 「なんで……なんで急にそんな事言うんだよって思いました」 悲痛な叫びにも似た、健斗の声は、この教授室を覆い尽くすように、暗い空気を醸し出す。 気づくと健斗は、右手で握り拳を作り、名一杯力を入れていた。 そんな健斗の様子を見た面々は、かなり辛い想いをしたと理解する。 「健斗……」 正輝はこんな親友の姿を見たのは初めてなのか、心配で思わず言葉を漏らした。 だが、他にかける言葉が見つからず、沈黙する。 そんな様子を見た千尋は、健斗に意思確認をするように問いかける。 「君にとっては突然の別れ話だったかもしれない。だが、相手の女が友達とどんな女同士の会話をしていたか知りたいか?君の心の傷をえぐる事になるかもしれないが」 千尋の言葉に少し沈黙し、思考を凝らしていた健斗だが、何かを決意したように口を開く。 「知りたいです。本当の事を。正直女性が何を考えているのか分かりませんので」 健斗の意思を確認した千尋は、亜美へと視線を向ける。 そして亜美は千尋と視線を交わすと、真剣な表情で頷いた。 それを確認した千尋は、演劇スイッチを入れ、口を開く。 「健斗君と付き合いだしてさぁ。少し経つんだけど……何か合わないんだよねぇ」 亜美も千尋に合わせるようにスイッチを入れた。 「えぇー。健斗君優しそうじゃん。何が不満なの?」 「優しいんだけどさぁ。ちょっと優しさの方向を間違えてるって言うかぁ」
/93ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加