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「あっ……」
すると、思い当たる事があったのか、健斗は思わず言葉を漏らした。
その様子を見た千尋は、深いため息を吐く。
「君は慣れない交際で必死だったのだろう。そしてその必死さで君自身、彼女との交際に疲れていたんじゃないか」
健斗は再度当時の事を振り返る。
言われてみれば、別れてからの生活は悲しい想いこそしたが、生活的には時間に余裕が出来、穏やかな生活をしていた気がする。
健斗の様子を見て肯定と受け取った千尋は、優しい声色で話かける。
「君は頑張った。ただ経験不足と相手との相性が悪かっただけだ」
「……有難う……ございます」
健斗はその言葉を聞いて、涙を流していた。
健斗が泣き止むのを待っていると、千尋が腕を組み、再度ため息を吐く。
「しかし、その女は実に優しく無い女だな」
「確かにそうですね」
千尋の言葉に、亜美も同意を示す。
涙を流したせいで、上手く言葉を吐き出せない健斗に代わり、正輝が問いかけた。
「どういう事でしょうか」
「だってそうだろ?健斗君の頑張りは彼女に伝わっていたはずだ。そして不満があるのに、健斗君に伝えなかった。一度もやり直すチャンスも与えずにだ。しかも別れる際も結局理由を言わなかった」
言い終わると千尋はコーヒーを一口飲み、また口を開く。
「きちんと理由を伝えれば、健斗君は今後に生かす事が出来る。まぁ相手の悪口を言うのは罪悪感に襲われるからな。それが嫌だったんだろう」
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