恋愛ホルモン

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世の男性が恋愛に踏み切れない理由は、そこにあるのかもしれない。 別れる際、本音を言わずに別れようとする。 それは相手への優しさでは無く、自分が傷つきたくない為の、自分への優しさなのかもしれない。 女性は『男ってバカな生き物だよね』などの言葉を平気で言うのを耳にしたりする。 そんな事の積み重ねが、恋愛から足を遠ざけるのかもしれない。 男だけでは無く、女もまた然り。 4人は各々の想いを巡らせていると、正輝はある疑問を抱く。 「健斗、確か優香ちゃんとの交際は3か月だったんだよな」 正輝の質問に、当時の事をこれ以上思い出したくないと思いながらも、健斗は重い口を開く。 「……ああ。そうだよ」 すると正輝はメモ帳をパラパラとめくり、千尋に視線を向けた。 「教授。今回の事例の女性も3か月で別れているようです。何か理由があるのでは無いですか?」 正輝の言葉を聞き、ホワイトボードで確認した亜美も、何かを感じたようだ。 「私の周りにも、3か月ぐらいで別れた子、結構居たかも。教授、何かあるなら教えて下さい」 2人の様子を見ていた健斗も、理由が知りたいと言わんばかりに、千尋に視線を向ける。 3人の熱い眼差しを向けられ、千尋は咳払いをすると、説明スイッチを入れた。 「恋愛初期、つまり交際をスタートさせた直後には、脳内でドーパミンとPEA(フェニルエチルアミン)と言う物質が大量に分泌されます。ドーパミンは好きな事に熱中、ゲームや趣味などに没頭したりする時に分泌され、興奮や快感を得る物質とされています。煙草などを吸うと、ドーパミンが分泌されるので、禁煙が難しいのはそれが原因なのかもしれません」 千尋はコーヒーを一口飲み、再び説明を始める。 「PEAは恋愛ホルモンとも言われ、視覚からの情報、つまり見た物に夢中になったりする効果があり、一目ぼれの要因とも言われます。そしてPEAが分泌されると、食欲が落ち、肌の状態が良くなる等の効果も見られ、『恋をすると綺麗になる。格好良くなる』と言われるのは、それが要因とも言えます」 いつもより饒舌な千尋の説明に、驚きながらも夢中で聞く3人。
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