恋愛ホルモン

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そのまま心理学棟を出た2人は、しばらく無言が続いたが、健斗がそれを破った。 「難しいなぁ。恋愛って」 「そうだな」 互いに一言言葉を交わすと、噴水広場の方へと足を運ぶ。 空を見ると、オレンジの夕日が辺りを照らしており、噴水が夕日色に染められている。 そして噴水の周りに設置されたベンチには、1人の女が座っていた。 「あのー」 その女は健斗と正輝を認識すると、ベンチから立ち上がり、近づいてくる。 健斗はその女を視界に捉えると、急激な緊張に襲われる。 その女は、健斗がハンカチを拾ってあげた、意中の女だったのだ。 「この前は謝ってくれて有難う御座いました」 女は丁寧に頭を下げる。 その姿を見た健斗は、緊張からか、上手く動かない口を必死に動かした。 「あ。い、いえ。頭を上げて下さい」 突然の出来事に挙動不審になってしまう健斗を、正輝は隣で見守る。 女は健斗の言葉で頭を上げると、少しだけ笑顔を見せた。 「それだけ言いたくて、失礼します」 そう言葉を残すと、女は踵を返し、歩いていく。 その背中を見送りながら、健斗は口を開く。 「なあ正輝」 「ん、なんだ?」 「これで調子に乗ったらダメなんだよな」 「そうだな。まずは相手を知る事だ」 2人は千尋の言葉を思い出しながら歩き出した。
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