女の勘

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そんな事を考えながら、健斗は今、食器の類を専用のケースに丁寧に詰め込んでいた。 すると、そんな健斗に年上の男が声をかける。 「柳君。それが終わったらこっちの荷物を頼むよ」 そういうと男は、健斗が詰め終えた荷物を外へと運んで行った。 健斗は今、引っ越し業者のアルバイトとして、作業を行っている。 大学の勉強に支障が出ないよう、暇な時に出来るこのアルバイトを少し前から始めたのだ。 千尋に出会ってからというもの、その影響からか、物事を深く考えようとする癖がついてしまったらしい。 労働をしていた為に、労働について深く考えていたが、まだ不慣れな為か、思考が脱線してしまう。 健斗は仕事に集中しようと、気合を入れ直す。 今日の客は、社会人になって2,3年目に見える若い男性で、転勤が決まり引っ越す事になったらしい。 健斗はその男性客と、その彼女らしい女性の3人で、荷物を詰め込んでいた。 するとクローゼットを整理していた女が、突然男に詰め寄って行く。 「ちょっと、これ何?」 女の手には綺麗にラッピングされた、小さな何かがあった。 それを見た男は口を開く。 「何ってこれは……」 「あなた浮気してるんでしょ!」 男の言葉を遮るように、女は声を荒げる。 突如始まったカップルの痴話喧嘩を前に、健斗はこのバイトを選ばなければと後悔していた。 何故健斗がバイトを始めたかというと、時を2週間前に遡る。
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