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「ちょっと待った」
健斗は慌てて声を張り上げた。
「何よー。途中なのに」
「いや。何で知ってるんですか?」
千尋と亜美の前で、彼女について話したのはハンカチ事件の時だけで、個人を特定できる情報は無かったはずだ。
それなのに、突然知らされる彼女の個人情報に、健斗は驚いてしまう。
「何でって、この前正輝君と噴水の前で偶然会った時に、坂下さんが通りかかったのよ。それで正輝君が健斗君の想い人だって教えてくれたの」
亜美は健斗に視線を向ける。
すると正輝は申し訳なさそうな表情をしながら、両手を顔の前で合わせ、健斗に謝る仕草をした。
健斗は正輝に視線を向け、顔をしかめる。
すると千尋が、2杯目の生ビールを飲み干すと、口を開いた。
「それを亜美君から聞いて、調べる様に指示したのは私だ。君の力になりたくてな。余計なお世話だったのなら謝る。すまなかった」
頭を下げる千尋に、健斗は慌てて言葉を吐き出した。
「い、いえ。お気持ちは嬉しいです。せっかくなので、最後まで聞かせて下さい」
3人のおかげで想い人の名前を初めて知った健斗は、もっと彼女の事を知りたいという欲求に負けてしまう。
健斗の言葉を聞いた亜美は、先ほどの続きを話し始める。
「坂下さんは社会福祉学部で、今年の夏休みは、自動車の運転免許取得の為に、自動車学校に通うそうよ」
「なんだと!」
亜美の報告を聞いた千尋は、突然声を張り上げる。
「亜美君。それは本当か?」
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