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「はい。坂下さんが友達と話しているのを偶然聞いたので」
それを聞いた健斗は、亜美が自分の想い人を付け回してまで情報を手に入れてくれた事に驚きながらも感謝をする。
しかし、千尋の驚いた理由が気になるので、言葉の続きを待った。
「その自動車学校の指導員に、若い男は居るのかね?」
千尋の言葉に即座に反応し、メモ帳のページをめくり、亜美は口を開く。
「はい。そこはぬかりなく調査してます。どうやら24歳の誠実そうな男性指導員がいるようです」
亜美の言葉を聞いた千尋は、ショックを受けたのか、顔を伏せた。
あまりの深刻そうな空気に、健斗は思わず問いかける。
「あのー。そんなに大変な事なんですか?」
千尋は、普段より少し低い声色で、顔を伏せたまま健斗に話しかけた。
「君は吊り橋効果というもの知っているかね?」
「……はい。なんとなく」
曖昧な返事をする健斗を助けるように、亜美が説明を始める。
「吊り橋効果とは、異性と2人でスリル(危険)な体験をしてドキドキすると、恋愛状態のドキドキと勘違いしてしまい、恋に落ちるという効果の事だよ」
亜美の簡潔で分かり易い説明により、理解する事が出来た健斗だが、千尋の様子には納得できないでいた。
そんな様子を察したのか、千尋は再び低い声で話し始める。
「自動車とは操作次第で危険な物になる。つまりスリルが満載なのだ。特に運転に慣れない最初の頃は、補助ブレーキや助手席からのハンドル操作によって助けて貰う事が多い。自動車の中という密室空間で、2人きり。そして吊り橋効果。そして接客業なので優しく対応する。故に若い指導員はモテるのだよ」
「そういえば去年私が別の自動車学校に通ってた時、不特定多数の学生に手を出して、クビになってた指導員が居たよ。やっぱモテるんだね」
千尋の説明、亜美の情報を受け、健斗は不安を抱き始める。
「そ、そうなんですね」
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